盲目の天使

「そりゃ見てればわかりますよ。私だって一応女ですからね。

でも、マーズレンの嫁になりたければ、侍女としてもう少し成長してもらわなければ、認められませんからね」


オルメは、腰に手を当てて、ルシルを上から見下ろすように細い目を向ける。

実際にはルシルの方が背が高いのに、なぜか見下ろされている気がするのは、独特の威圧感のせいだろうか。


「どうして、オルメ様に認めていただかなくてはいけないのですか?」


ルシルの疑問は至極当然だと、リリティスも思った。

が。


「そりゃ、私があれの母親だからです」


「「えぇ~??」」


リリティスとルシルの驚いた悲鳴が、同時に上がる。


「さて、今日のリリティス様のお茶の準備は完璧でしょうね?」


世間話をした後でも、オルメの態度は、少しも甘くならない。

侍女として誇り高いオルメにとっては、部下の出来栄えは、自分の出来栄えと同等の意味をあらわす。


「はぁ~い。確認お願いいたしまぁすぅ~」


前途多難な恋の行方を予感して、ルシルの声が張りを失うと、すかさずオルメの厳しい一言が飛んできた。


「ほら!しゃきしゃきなさい!」





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