盲目の天使
「何をそんなに焦っているのです。誰かと約束でもあるのですか?
例えば・・・カナンの小娘、とか?」
「母上!」
ソレイユは、目配せして周りの侍女を下げさせた。
「そなたの行状を知らぬとでも思っているのか?
毎日のように、あの娘に会いに行ってるそうではないか」
「母上。私はリリティスを、」
「いいかげんになさい!よいですか、シオン。
お前は次代の王になるのですよ。
それが、あんな捕虜にいれこむなど。
そばめにしたいなら、正式に妃を娶ってからになさい。
そうすれば、あんな娘など、いくらでも好きなようにすればよい」
身分の低い娘。
それは、いやおう無しに、カルレインの母親を思い起こさせて、
ソレイユの心を掻き毟る。
夫ばかりか、大事な一人息子までも、あんな卑しい娘に取られてたまるものか!