盲目の天使

「何をそんなに焦っているのです。誰かと約束でもあるのですか?

例えば・・・カナンの小娘、とか?」


「母上!」


ソレイユは、目配せして周りの侍女を下げさせた。


「そなたの行状を知らぬとでも思っているのか?

毎日のように、あの娘に会いに行ってるそうではないか」


「母上。私はリリティスを、」


「いいかげんになさい!よいですか、シオン。

お前は次代の王になるのですよ。

それが、あんな捕虜にいれこむなど。


そばめにしたいなら、正式に妃を娶ってからになさい。

そうすれば、あんな娘など、いくらでも好きなようにすればよい」


身分の低い娘。

それは、いやおう無しに、カルレインの母親を思い起こさせて、

ソレイユの心を掻き毟る。


夫ばかりか、大事な一人息子までも、あんな卑しい娘に取られてたまるものか!






< 197 / 486 >

この作品をシェア

pagetop