盲目の天使
肉の香ばしい匂いが、ソレイユのまとう、強い香に邪魔をされ、
まったく、食欲をそそりそうもない。
アルシオンは、食事の手を休めると、まっすぐ顔を上げて、ソレイユをにらみつけた。
「母上!
リリティスを捕虜などというのはやめてください!!」
いつもおとなしく、自分に逆らったことのない息子が、大きな声を出したのを聞いて、
ソレイユは驚いた。
「私は、リリティスを愛しています。
それに、私が王になるかどうかなど、決まったことではありません。
兄上のほうが、王にふさわしいと、いいかげん母上も認めるべきだ!」
アルシオンは、生まれて初めてソレイユにはむかうと、そのまま部屋から出て行った。
なんということ!あのおとなしいシオンが、こんな風に怒りをあらわにするとは。
田舎者の小娘が、どんな手を使ってシオンをたぶらかしたのか。
ソレイユは、目の前に並んでいる皿を壁に投げつけた。
大きな音がして、砕けた破片が、床に散らばった--。