盲目の天使
誰もいない、薄暗い部屋の中。
いらだつ気配だけが、部屋の空気を支配している。
「くそっ!」
カルレインの投げたコップが、宙を舞って床に叩きつけられた。
どうして、こんなことになるんだ。
ついこの前までは、あんなに毎日が潤っていたのに。
夜になり、やっとのことで執務を終えると、カルレインは自室で怒りをあらわにした。
どこで、何を間違ってしまったのか。
もう、何もかも遅すぎるのか。
リリティスに会いに行きたかったが、どうしてもその勇気が出ない。
会えば、また、辛く当たってしまいそうな気がする。
やりきれない思いを抱えて、カルレインは、髪の毛をかきむしった。
その時、軽快な足音とともに、マーズレンが入ってきた。
「お疲れのところを申し訳ありません。
リリティス様付きの侍女ルシルが、カルレイン様に会いたいと申しております」