盲目の天使

部屋に入り込む陽射しに、カルレインは、目を眇める。


「お前まで、俺を狼扱いか?」


「夜中にリリティス様の寝所に忍び込むなど、狼のほうがかわいいかもしれません。

オルメ様なら、朝食を取りにいっております。

その間、姫様のお世話を任されました」


ルシルは、すました顔で、リリティスの手を取り、寝台からおろす。


「あ、あのねルシル・・・」


リリティスが、カルレインを弁護しようとしたが、ルシルは知らんふりだ。

カルレインは、残念そうに深く息を吐くと、扉の方へ足を向けた。


「ありがとうございました。

カルレイン様・・・」


立ち去ろうとしたカルレインに、声をかけたのは、

リリティスではなく、ルシルだった。


一回り小さくなった、リリティスの体。

しかし、その顔には生気が宿り、昨日までとは、明らかに違うことが見て取れる。



・・本当に、感謝します。



ルシルは、誰にも気づかれぬよう、くすんと鼻をすすった。
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