盲目の天使
驚いたカルレインが振り返ったが、
ルシルは、背を向けてリリティスの前に膝をついたままだ。
「いや。俺のほうこそ、ありがとう。
ルシル・・」
深夜、リリティスの部屋に忍び込む自分を、見逃してくれたこと、
そしてなにより、自分のおろかさを、指摘してくれたこと。
ひょっとしたら、命を懸けて・・・。
マーズレンは、なんと素晴らしい侍女を、見繕ってきたものだ。
カルレインは、この世の、あらゆることに、感謝した。
ルシルが、カルレイン様を連れてきてくれたのね・・・。
カルレインの言葉を聞いて、
リリティスはルシルが自分のために、一肌脱いでくれたのだと気づいた。
「ルシル・・。
私からも・・・どうも、ありがとう」
「いいえ、私は何もしておりません。
でも、今日は、きちんと朝食を召し上がってくださいね」
ルシルは、にっこりと微笑んだ。