盲目の天使
「そういえば、オルメがそんなことを言っていたわね。
でも、私には関係ない話だわ」
リリティスは、手探りで動かす針の手をとめないまま、そっけなく答えた。
カナンにいた頃だって、宴に出たことなどない身だ。
この国で催されるものに、自分が縁のあろうはずもない。
「何をおっしゃってるんです!
城下でも祭りが催されるのですよ。
老若男女問わず、皆楽しみにしているんです。
リリティス様のドレスも、もちろん、カルレイン様がご用意されてますよ」
ルシルは、リリティスの着飾った姿を思い描いて、うっとりした。
この自分が仕える姫は、きっと他の誰よりも、輝いて見えるに違いない。
・・みんな、驚いて、腰を抜かしてしまうかも。
一人、想像して、顔がほころぶ。
どうせなら、ノルバスの民衆にも、みせびらかしてやりたいものだ。
「そうだわ!リリティス様。
祭りの時に、城下に出られるよう、カルレイン様に頼んでみてはいかがです?」