盲目の天使
涼やかな風が、新鮮な空気を孕んで、部屋の中を闊歩すると、
リリティスの銀糸のような艶やかな髪の毛が、ふわりとたなびく。
「今日は、また、ずいぶんと楽しそうですね」
オルメが、両手に美しいドレスを抱えて、部屋に入ってきた。
「あ、オルメ様。
だって、リリティス様ったら、自分には宴は関係ないなどと、おっしゃるんですよ」
一瞬、むくれた顔をしたものの、オルメの手の中を見て、ルシルは、思わず笑みがこぼれた。
やはり、カルレインは、リリティスを一番に思ってくれている。
そうでなければ、こんなにも、リリティスに良く似合うものを、探し出せないはずだ。
「それは違いますよ、リリティス様。
今回の宴では、リリティス様が、一番の関係者かもしれません」
オルメの慎重な口調に、リリティスの顔から笑顔が消えた。
「きちんと説明してくださいますか?オルメ」
それは多分、宙ぶらりんだった、自分の処遇が、
決まるということなのだろうと、リリティスは思った。
ひどく揺れる心。
しかし、自分は、カナン国の王女なのだ。
毅然とした態度でいなくては、どうする。
リリティスは、きゅっと唇を噛み締めた。