盲目の天使

涼やかな風が、新鮮な空気を孕んで、部屋の中を闊歩すると、

リリティスの銀糸のような艶やかな髪の毛が、ふわりとたなびく。


「今日は、また、ずいぶんと楽しそうですね」


オルメが、両手に美しいドレスを抱えて、部屋に入ってきた。


「あ、オルメ様。

だって、リリティス様ったら、自分には宴は関係ないなどと、おっしゃるんですよ」


一瞬、むくれた顔をしたものの、オルメの手の中を見て、ルシルは、思わず笑みがこぼれた。


やはり、カルレインは、リリティスを一番に思ってくれている。


そうでなければ、こんなにも、リリティスに良く似合うものを、探し出せないはずだ。


「それは違いますよ、リリティス様。

今回の宴では、リリティス様が、一番の関係者かもしれません」


オルメの慎重な口調に、リリティスの顔から笑顔が消えた。


「きちんと説明してくださいますか?オルメ」


それは多分、宙ぶらりんだった、自分の処遇が、

決まるということなのだろうと、リリティスは思った。


ひどく揺れる心。

しかし、自分は、カナン国の王女なのだ。

毅然とした態度でいなくては、どうする。


リリティスは、きゅっと唇を噛み締めた。





< 233 / 486 >

この作品をシェア

pagetop