盲目の天使
だが、オルメの声は、すでに、カルレインには届いていない。
ただドレスを着ただけで、髪も飾らず、化粧もしていないリリティスの姿に、
カルレインは、釘付けになったまま、声も出せない。
リリティスは、不安になった。
よほど、自分に似合わないのか。
もしかして、自分の姿に、カルレインは、がっかりしてしまったのではないか。
「おかしい・・・、ですか?」
自分の目の前に、気配を感じるのに、一言も発さないカルレイン。
リリティスは、ドレスを着たことを後悔した。
「ち、違う!」
珍しくどもったカルレインの口調に、オルメとルシルは、顔を合わせて、吹き出した。
「リリティス様。
カルレイン様は、リリティス様のドレス姿が美しすぎて、声を失ったのです。
その証拠に、カルレイン様のお顔は、ほんのり赤くなっておいでです」
オルメは、カルレインをチラッと見て、くすりと笑った。
確かに、その姿は、人を惹きつけるだけの魅力を、充分に備えていたが。
・・カルレイン様も、案外、うぶなこと。
誰にも心を開かないなどと、色眼鏡で見ていたのは、どうやら自分の方だったらしい。
リリティスのおかげで、また一つ、新しいカルレインを見出すことが出来たと、
オルメは、心の中で、彼女に頭を下げた。