盲目の天使
まさか、私が美しいだなんて、そんなことは・・・。
最後に、自分の姿を見たのは、いつだったろう。
確か、体中、泥まみれになって、湖で沐浴をしたときではないだろうか。
リリティスの苦笑いを見て、ルシルは、彼女の考えが、手に取るように分かった。
「女は、言葉にしないとわかりませんよ、カルレイン様?」
ルシルは、カルレインを非難するように見つめる。
「あ、ああ。
その・・・、
想像以上に綺麗だ、リリティス」
最初に会ったときから、美しい娘だと思っていた。
だが、それは、あどけなさを含む、少女のそれだ。
あれから、ほんの数ヶ月の間に、
におい立つような、色香をまとい始めたように見える。
幼さのわずかに残る微笑みと、すでに、女として、なんら遜色のない体つきは、
危うい均衡の上に成り立ち、何ともいえぬ輝きを放っている。
その細い首もとから覗く、鎖骨を見て、カルレインの心臓が、どくんと跳ねた。
それが、誰のせいなのか。
ということには、少しも頭が回らず、カルレインは、ただただ呆然とリリティスを見つめる。
彼女は、恥ずかしそうにうつむいた。