盲目の天使
穏やかな日差しが、惜しみなく降り注ぎ、虫たちの声が、音楽を奏でて響く。
緑を通る風は、直接受けるそれとは違い、格段に気持ちが和む。
二人が来たのは、カルレインの母が、好んでいた中庭だった。
リリティスはドレスを着替え、ルシルとオルメは、部屋でドレスの裾をつめている。
しばらく忙しくて、二人でゆっくり過ごすのは、久しぶりだ。
リリティスは、寄り添うように中庭を歩きながら、つい、思い出し笑いをした。
「何がおかしい?リリティス」
一人で、にこにこと笑っているリリティスを、不審に思って、
カルレインの足が、止まる。
「その・・出掛ける時、
ルシルにさまざまな注意を言われたカルレイン様が、おかわいそうに思えて・・」
かわいそうに、と言いながら、
リリティスは、やはり、おかしくてしかたないと言った風に、声を立てて笑う。
虫の声までが、リリティスに呼応するように、けたけたと鳴り響いた。