盲目の天使

まったく、と言いながら、カルレインは、片方の眉を軽く上げる。


「ルシルのやつは、すっかりオルメに感化されたな。

小言も二倍に増えて、俺の身が持たない」


ルシルの話題をふりながらも、カルレインは、リリティスから目を離そうとはしない。



・・どうやら、俺は、すっかりリリティスに参っているらしい。



笑われているのに、腹が立つどころか、嬉しくなってしまう自分に、

カルレインは、自分が牙を失くした、獣のように思えた。


失くした牙は、リリティスに折られてしまったのか。

それとも、隠されてしまったのだろうか。


なんにせよ、自分は、この愛らしい姫の前では、ただの男に成り下がってしまうらしい。


しばらく、二人で楽しい時間を過ごし、笑いが途切れたときだった。


「ところで、カルレイン様・・・」


ふいに、リリティスの口元から笑みが消えて、真剣な口調になった。


「せっかく二人きりになれたのに、こんな話をするのは申し訳ないのですが」


そう前置きして、リリティスは、言葉を選びながら、慎重に口を開いた。


「宴では、私は、どういう立場でいればよいのでしょうか」





< 240 / 486 >

この作品をシェア

pagetop