盲目の天使
まったく、と言いながら、カルレインは、片方の眉を軽く上げる。
「ルシルのやつは、すっかりオルメに感化されたな。
小言も二倍に増えて、俺の身が持たない」
ルシルの話題をふりながらも、カルレインは、リリティスから目を離そうとはしない。
・・どうやら、俺は、すっかりリリティスに参っているらしい。
笑われているのに、腹が立つどころか、嬉しくなってしまう自分に、
カルレインは、自分が牙を失くした、獣のように思えた。
失くした牙は、リリティスに折られてしまったのか。
それとも、隠されてしまったのだろうか。
なんにせよ、自分は、この愛らしい姫の前では、ただの男に成り下がってしまうらしい。
しばらく、二人で楽しい時間を過ごし、笑いが途切れたときだった。
「ところで、カルレイン様・・・」
ふいに、リリティスの口元から笑みが消えて、真剣な口調になった。
「せっかく二人きりになれたのに、こんな話をするのは申し訳ないのですが」
そう前置きして、リリティスは、言葉を選びながら、慎重に口を開いた。
「宴では、私は、どういう立場でいればよいのでしょうか」