盲目の天使
リリティスの立場は、そのままカナン国の扱いに通じる。
リリティスは、自分の身よりも、母国の民の扱いが気にかかっていた。
与えられたドレスからも、宴に出ない、という選択肢は、なさそうだ。
不安げなリリティスを勇気付けるように、カルレインは、ぎゅっと肩を抱き寄せた。
「何も心配することはない。
宴の席で、お前は俺の妻になるものとして、堂々と振舞えばよい」
「ですが・・・」
リリティスの言いたいことを、カルレインはよくわかっていた。
そもそも、リリティスを褒美にほしいと言ったのは自分だし、
この国に連れ去ったのも、自分だ。
当然、宴の席では、リリティスに対して、
捕虜や褒美という単語が、頻繁に使用されることは想像に難くない。
しかし、いまさらリリティスを物扱いすることなど、
カルレインには、到底無理だった。