盲目の天使
「リリティス。
お前の着替えを手伝ってやりたかったが、俺も仕事がある。
あとで、食事を運ばせるから、それまでに着替えておけ」
カルレインがそう言った時、
ちょうど朝起きたときに聞こえていた、聞きなれぬ獣の鳴き声を耳にして、リリティスはびくりとした。
「どうした?」
「いえ、あまり聞きなれない獣の鳴き声がしたので・・」
声自体は、とてもかわいらしく愛らしいのだが、目の見えぬリリティスには、
それが、危険なものかどうかの判断ができない。
自然、恐怖心と、警戒心が沸き起こる。
「あぁ、あれか。あれは私が飼っている鷲(わし)の声だ」
カルレインの答えは、あっさりしたものだった。
「鷲、ですか?」
「ジルという。私の命令はちゃんと聞くから安心しろ」
話には聞いたことがあるが、鷲などという生き物は、目が見えていた頃にも、目にしたことはない。
人の言う事を聞くと言うことは、かなり頭のいい動物なのだろうか。
リリティスの様子にかまうことなく、侍女を手配しておくから、と付け足して、
カルレインは部屋をあとにした。