盲目の天使



誰かしら?

侍女にしては、少し重々しい感じの足取りだわ。



リリティスは、それが侍女のものではなく、男性のものだと感じていた。



もしや、カルレイン様?

あぁ、そうならいいのに!



リリティスは、祈るような気持ちで、足音の主が来るのを、待ちわびた。


カルレインにとっては、自分の事を、忘れた方がいいのかもしれない。

自分がいなければ、もっと相応しい誰かと結ばれて、

カルレインの人生は、すばらしく、有意義なものになるのだろう。


そんな風に考えても、やはり、リリティスは、カルレインに会いたかった。

たった一人の人間に、恋焦がれ、両想いになる喜びを知った今となっては、

カルレインのいない人生など、想像も出来ない。


一体、今まで自分がどうやって生きてきたのかさえ、思い出せないくらいだ。


足音が、一段一段、大きく響き、やがて、牢の扉に手をかける音がした。



誰なの?



しかし、それは、リリティスの期待を、大きく裏切る人物だった。





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