盲目の天使
とにかく、何か、話をしたほうがいい。
沈黙に耐え切れず、リリティスは、とりあえず、疑問を口にした。
「それで、どのようなことで、こんなところまでいらっしゃったのですか。
私は、おかげさまで、何不自由なく、すごさせていただいております」
カルレインと会えない事を除けば、ここの生活は、カナンでの生活と、確かに、なんら変わりがない。
幽閉生活に慣れたリリティスにとれば、一見、たいしたことではないように思える。
しかし、一度知ってしまった自由を、再び奪われることは、
相当の苦しみを伴って、リリティスの心を、かきむしった。
リリティスは、それをおくびにも出さず、プロンの機嫌を損ねぬよう、
当たり障りのない会話を、するつもりだった。
「そうか。
ところで、姫は、なぜ私を殺そうとしたのか教えてくれぬか。
やはり、カナン国の恨みか」
王が、先ほどまでと違い、冷静な声で聞いてきたのに、
リリティスは、逆に安堵した。
馬鹿だわ、私ったら。
ノルバスの王ともあろう人が、おかしなまねをするはずがないのに。
わざわざ私の話を聞きに、ここまでいらっしゃったのだわ。
リリティスは、王を疑った自分を反省して、プロンに無実を訴えようと思った。