盲目の天使
月が雲に隠れたのか、さっきまで明るかった牢の中は、薄闇に包まれる。
プロンは、どきりとしたが、リリティスには、わからなかった。
「私は、王に毒など盛っておりません」
リリティスの、きっぱりとした声は、静かな牢の窓から、空に吸い込まれていく。
「だが、首飾りからは、毒が見つかったではないか」
プロンは、真偽を見極めようと、濁った瞳を、いっぱいに開く。
「それは、私にはわかりません。
しかし、私が毒を持っていたとしても、
どうやってそれを王の杯に入れることができましょう。
私のように、のろのろとした小娘が、そんなことをしていたら、
覇王と名高いプロン王に、一瞬で気づかれてしまうでしょう」
リリティスは、なるべく言葉を選んで、慎重に訴えた。
なるほど、どうやら頭も、働くらしい。
プロンは、リリティスを、上から下まで眺めて、ふんっ、と笑った。