盲目の天使

いかにも、カルレインを心配しているのだという口ぶりで、ソレイユは続けた。


「その指輪の石には、毒薬が入っております」


「毒?」


「ええ。

それをあなたが飲んで、自害すれば、カルレイン王子は助かります」



何でもないことのように、さらりと言ってのけてから、ソレイユは、リリティスを値踏みするように眺める。



何でもすると言ったけれど、本当にそうかしら。

どうせ、自分の命がおしくなって、カルレインを毒殺の犯人にするのではなくて?



ソレイユにとっては、どちらでも同じことだった。


自分の言葉どおり、リリティスが、死を選べばそれで良し。

選ばなければ、自分が毒を飲ませ、自害した細工をすればよいだけのこと。


それでも、あえて、最初から後者を選ばなかったのは、

精神的な苦痛を、味あわせたかったからに過ぎない。


「自害・・・」


「全て、あなた一人がやったこととして、死ねばよいのです。

王も、死んだあなたのことを、それ以上、責めたりはしないでしょう。

お国のことが心配なら、私が王に口ぞえしてもかまいませんよ」


ソレイユは、意地悪い笑いを浮かべて、リリティスの肩を、抱き寄せた。




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