盲目の天使
「侍女、ですか?」
「そうだ。リリティスの世話をする者が必要だ。
ノルバスに連れて行ける健康な者を探せ」
「王女をお連れになるのですか?」
「当然だ。彼女は正当なカナンの王位継承者だ。
カナンの残党がリリティスを旗印にノルバスにはむかう可能性もある」
「確かにそうですが」
マーズレンには、一抹の不安がよぎった。
ノルバスへの道のりは、馬で10日間ほどだが、
途中に険しい山道があるため、馬車は使えない。
ノルバスが周辺の国々と交流が活発でないのも、
この山々のせいだった。
果たして、城で育った、しかも目の見えない王女に、耐えられるのだろうか?
「頼んだぞ、マーズレン」
主の命令に、マーズレンは、頷くしかなかった。