盲目の天使
その部屋は、いつもと違い、酒だけでなく、香の匂いが充満していた。
「プロン王。いかがですか?」
ソレイユは、プロンの私室で、お酌をしながら流し目を送る。
その口元には、弧を描いた妖艶な唇。
本当は、王女が死んでからと思っていたけど、
急ぐに越したことはないわ。
当初、ソレイユは、リリティスが死んで、カルレインに罪を着せた後、
自動的に、アルシオンが跡継ぎになるのを、待つつもりだった。
しかし、カルレインが、自分の周囲を、色々とかぎまわっている。
・・急がなくては。
カルレインの行動に、危機感を募らせ、
アルシオンを跡継ぎにするよう、プロンに頼みに来た。
「カルレイン王子は危険ですわ。
王を毒殺しようとしたのは、カルレイン王子ではないかと、皆、不安がっております。
人心が揺れている今、跡継ぎを明確にすることで、皆を安心させるべきですわ。
ノルバスの未来のためにも、今こそ、王がご決断なさるべきではありませんか?」