盲目の天使
「カナン城は、もう見えなくなった?」
リリティスは、しばらく前から自分の世話をしている、若い侍女に声をかける。
「はい。もうすっかり見えなくなりました。
お体は、苦しくないですか?リリティス様」
馬車の乗り心地は、お世辞にもあまり良いとは言えず、
侍女は、リリティスが酔ってしまうのではないかと、気になっていた。
「えぇ、大丈夫よ。ルシル。
それよりも、あなたまでノルバス国に連れて行かれることになって・・
本当に、なんと言ってわびればいいのか」
リリティスは、自分と共に、
侍女としてノルバス国へ行くことになった少女--ルシルに頭を下げた。