盲目の天使
「とんでもない!頭を上げてくださいませ。
うちは、貧乏で、侍女としてノルバスへ行くからと、
たくさん支度金をいただいたんです。
あのお金で、弟や妹たちが飢えずにすみます。
こちらこそ、王女のお世話をさせていただくのが、
私のような礼儀作法も知らない者で、本当に心苦しいです」
ルシルは、本当にそう思っているのか、目の見えないリリティスの前で、ぺこぺこと頭を下げる。
「そんなことはないわ。同じカナンの者というだけで、こんなにも心強いもの。
年も近いのだし、どうか仲良くしてね」
カナンの城が落ちて一ヶ月。
カルレインは、少数の兵士をカナンに残して、自分たちは、帰途につくことにした。
その一ヶ月の間に、リリティスは、一人で簡単に着替えられるようになり、
湯浴みもなんとかこなせるようになっていた。
カルレイン様は、どうしておられるのかしら?
最初の日こそ、リリティスの部屋に現れたカルレインだったが、
かなり忙しいらしく、数人の侍女に彼女の世話をさせて、自分はめったに姿を見せなかった。