盲目の天使
「では、これだけでも、お召し上がりください」
オルメは、カルレインの食事を置いて、一礼すると部屋を下がった。
プロンが死んでから、政務は、アルシオンとロキ大臣が執っている。
ノルバスの民には、王が死んだことはふせてあり、
王妃が、犯人として捕らえられていることも、また、内密にしてあった。
「兄上。リリティスの様子はいかがですか?」
アルシオンは、忙しい政務の合間を縫っては、こうしてリリティスの元へと通っている。
アルシオンの言葉に、カルレインは、力なく首を横に振って答えた。
「そうですか・・・」
お互い、睡眠不足と過労で、酷い顔をしている。
だが、忙しい分、自分の方が、幾分ましかもしれない、とアルシオンは思った。
忙しさにまぎれれば、嫌な事を考えなくてすむ。
リリティスの寝台の横に、ずっと座っているカルレインに比べれば、
動き回っている自分は、まだまだだ。
「王妃は、どうしている?」
アルシオンの肩が、ぴくりと揺れる。