盲目の天使
「・・・すまなかったな、アルシオン」
わずかなためらいとともに、カルレインは、感謝とも謝罪ともつかぬ言葉を、つむいだ。
「いいえ、母は、自業自得ですから。
それよりも、私が、もっと早くに決断していれば、こんなことにはなりませんでした。
申し訳ありません。兄上」
自分は、母の気持ちに気づいていたのだ。
プロンに毒を持ったのが、誰かということも。
それなのに、肉親の情に流されて、正確な判断を欠いていた。
いいや、ひょっとしたら、母が罪人になることで、自分の立場が悪くなる事を恐れたのかもしれない。
己の身が、一番大事で。
その代償が、これだ・・・・。
「いや、俺のほうこそ許してくれ。
俺は、お前のことを誤解していた。
てっきり、王妃と共謀して、俺を、追い落とすつもりなのだろうと思っていた」
王妃が、怪しいと確証したあの時。
たとえ、王妃と共謀していなくても、見て見ぬふりをするのだろう、
カルレインは、アルシオンのことを、そんな風に思っていた。