盲目の天使



・・確かに、私も初めて会ったときから、少しも怖いと思わなかったわ。

カナンに火をかけるとおっしゃったときは、とても恐ろし方なのかと思ったけれど、

着替えを手伝って下さろうとしたし・・。



そこまで考えて、カルレインに夜着姿を見られたことを思い出し、

リリティスは、赤くなってうつむいた。


「あ、申し訳ありません!

カナン国に戦を仕掛けてきた方を、素敵だなんて言って・・」


リリティスの沈黙を、怒りと勘違いしたルシルは、あわてて、詫びた。


よく考えれば、庶民の自分と違って、リリティスは、王女なのだ。

敗れた国の王女が、蹂躙した国の王子に対して、好意を抱くわけがない。

これだから、自分はだめな侍女なのだ。


ルシルは軽率な自分の行為を恥じたが、リリティスは穏やかにそれを否定した。


「いいえ、違うのよ。

私は目が見えないから、カルレイン様がどんな容姿をしてるか

わからなくて」




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