盲目の天使



・・残念ながら、天国へは、行きそびれたらしい。



男は、何とかして起き上がろうと、体に力を入れた。


「うっ!!」


鋭い痛みが、電流のように全身をかけていく。


「あの、これを・・」


そう言って、少年が差し出したのは、水の入った粗末な入れ物だった。

どうやら、さっき感じた口の中の冷たいものは、この少年が飲ませた、水だったらしい。


男はそれを見ると、とたんに自分の喉の渇きを覚えた。


なんとか水を飲もうとあがいていると、

少年が、自分の首の下へ手を入れて、首を抱き起こし、ゆっくりと水を含ませてくれた。


男は、少年の手が、ほんの少し震えていることに気づいた。





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