盲目の天使
「お医者様を呼んできます」
少年は水を飲ませ終わると、さっと立ち上がり、後ろを向いた。
「待て!誰も呼ぶな」
「え?
でも・・・、怪我をしています」
「大丈夫だ。しばらく休めばよくなる。
いいか!
俺のことは、誰にも言うな」
男は、痛む腕を押さえて、精一杯、少年をにらみつける。
少年は、大きな瞳をそれ以上に見開くと、こくんと頷いて、去っていった。
ここで、人を呼ばれるのは困る・・・。
少年を睨みつけたものの、自分が一歩も動けない状態では、何の効果もないだろう。
男は、少年が人を呼んでくる前に、何とかして移動しようと思った。