盲目の天使
馬車は、かたことと軽ろやかに進むかと思うと、
時々、大きく、がたんと派手に揺れる。
そのたびに、リリティスとルシルの体は、ぴょん、と飛び跳ねるように宙に浮き、
2人揃って、きゃっ!と軽い悲鳴を上げた。
「カルレイン様は、どんな色の髪をなさっているの?」
今まで、他人の容姿どころか、自分の容姿も気にしたことはなかったが、
夫となる者の髪の色くらい知っておこうと思い、
揺れる馬車の椅子にしっかりとつかまって、リリティスはルシルに話しかけた。
「髪の毛も、瞳も、漆黒で、どても艶やかですよ。
肌の色は、日に焼けていて浅黒くて・・。
背も高いし、とても、たくましい感じで、
かっこよくて、素敵です!」
最初の方こそ、冷静に話し始めたルシルだったが、
カルレインの姿を想像すると、次第に身を乗り出して、自然に大きな声になった。