盲目の天使

すでに太陽は沈み、部屋の灯りに照らされた数人の人影が、揺れていた。


医師の診察を、カルレインが無言で見守っている。

すぐ近くには、オルメとルシルが、心配そうに顔を寄せあっていた。


「では、どうしてここにいるのか、何も覚えていないのですね」


「はい。

私は、カナン国にいたはずなのに、どうして、ここにいるのでしょうか」


「では、この方が誰か、わかりますか?」


医師は、カルレインの方を向いて、リリティスに尋ねた。


「すみません・・・」


リリティスは、しばらくカルレインを眺めたが、

申し訳なさそうに、うつむいてしまった。



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