盲目の天使
「ルシルったら、なんだか楽しそうね」
ふふっ、と笑って、
リリティスは、思わずこぼれるように、自分が自然に笑ったことに驚いた。
こんな風に、作りものでない笑いは、いつぶりだろう。
故郷を離れて、人質のように敵国へ連れて行かれるというのに・・。
・・・私、楽しみなのかしら?
リリティスの思いを肯定するように、ルシルの張りのある高い声がする。
「そりゃあ、楽しいです。
もちろん不安もありますけど、カナン王の悪政を思えば、
むしろノルバスの方が・・」
ルシルは、自分の失言に気づいて、慌てて口を覆った。
また、やってしまった。
「あ、いえ、すみません。
私ったら、馬鹿だから、つい口が滑って!」