盲目の天使
「お、起きていらっしゃたのですか?」
おずおずと、声をかける。
「いや、たった今、目が覚めた。
戦場暮らしが長いので、人の気配には敏感なんだ」
カルレインは、起きたばかりで機嫌が悪いのか、眉間にシワをきざんだまま、目を細める。
「あの、手を・・、離してください」
あぁ。
お願いだから、黙ってちょうだい!
リリティスは、自分の胸に手を当てて、さっきから、うるさく脈打つ心臓に命じる。
激しくなるばかりの心臓の音が、カルレインに聞こえそうで、うつむいた。
意識すると、よりいっそう、速度をあげる鼓動。
体を離したら、なんとかなるだろうかと、身をよじった。
リリティスの恥ずかしそうな様子を見て、カルレインは、一気に目がさえる。
徐々に高まる熱にうかされるように、言葉をつむいだ。
「いやだな。
離すつもりは、ない」
カルレインは、崩れ落ちそうな、リリティスの体を抱きなおし、自分の膝の上に横抱きにした。
至近距離で、拘束すると、にやりと、口角を吊り上げて、笑った。