盲目の天使
それをなんとか、自分の腕の中に押しとどめた。
「いや、そうではない。
お前が可愛いので、笑ってしまったんだ」
そっぽをむくリリティスの頬に、そっと触れる。
ゆっくりと、自分のほうを向かせると、リリティスは、泣きそうな瞳で、自分を見つめた。
「元気になってくれて、よかった・・・」
カルレインの、優しいまなざし。
良かったと、そう言いながらも、
どこか、切なそうな表情になるカルレインに、リリティスは、胸が刺すように痛んだ。
どうして、そんなに、さびしそうな顔をなさるの?
聞いてみたい気もした。
しかし、聞いてはいけないような、気もした。
そんな表情をさせているのは、自分なのだろうか。
それとも、もっと他の何か・・・。
リリティスが、物思いに沈みかけたとき、カルレインは、突如、楽しげな表情に変わった。
「さて、忘れてしまったようだが。
お前は、毎朝、起きたら、私に口付けていたんだ。
今日も、口付けてくれないか?」
嘘とも真とも取れるような、きっぱりとした声。
「え・・」
リリティスは、思いもかけないカルレインの言葉に、目に見えて、うろたえた。