盲目の天使

「叔父様は、そんなに酷い王だったの?」


リリティスの小さな声は、

ルシルを責めたりはしなかった。


「・・・はい。

前王ユリウス様の治世は、農民もみな豊かな暮らしをしていましたが・・。

弟のベリウス様が王になってからは・・・。

税率が3倍に跳ね上がり、税を納められないものは、農地を取り上げられて、

小作人になるしかなくて」


「小作人?」


聞き慣れない、言葉。


「自分の農地を持たず、他人の農地で日雇いで働かされる者のことです。

安い賃金でこき使われて、病気になる者も多くて・・」


初めて知った、事実。



叔父様は、父の政策をそのまま引き継いで農民を大事にしていると、

そうおっしゃっていたのに・・。



ルシルの話は、リリティスには、衝撃的だった。

自分は一体、カナン国の何を知った気になっていたのだろう。

王女だなどと、恥ずかしげもなく、当たり前のように名乗って。





< 40 / 486 >

この作品をシェア

pagetop