盲目の天使
「叔父様は、そんなに酷い王だったの?」
リリティスの小さな声は、
ルシルを責めたりはしなかった。
「・・・はい。
前王ユリウス様の治世は、農民もみな豊かな暮らしをしていましたが・・。
弟のベリウス様が王になってからは・・・。
税率が3倍に跳ね上がり、税を納められないものは、農地を取り上げられて、
小作人になるしかなくて」
「小作人?」
聞き慣れない、言葉。
「自分の農地を持たず、他人の農地で日雇いで働かされる者のことです。
安い賃金でこき使われて、病気になる者も多くて・・」
初めて知った、事実。
叔父様は、父の政策をそのまま引き継いで農民を大事にしていると、
そうおっしゃっていたのに・・。
ルシルの話は、リリティスには、衝撃的だった。
自分は一体、カナン国の何を知った気になっていたのだろう。
王女だなどと、恥ずかしげもなく、当たり前のように名乗って。