盲目の天使
しかし、リリティスは、疑うことを知らない。
当然のように、カルレインの言葉を、真実だと思った。
「あの・・・。では、もしや、私たちは結婚しているのですか?」
それならば、これまでのカルレインの態度も、理解できる。
倒れた自分の傍で徹夜の看病をし、こんな風に、気安く自分に触れることも。
それとも、それは、自分の願望なのだろうか。
カルレインは、知らずに、力がこもった。
「いや。それは、“まだ”だ。
だが、お前は、私を愛していた」
カルレインの言葉は、嘘とは思えなかった。
それは、リリティスの心が、今、感じていることの、答えのように思えたからだ。
でも・・自分から口付けるだなんて、できないわ。
記憶を失うと、性格まで変わってしまうのだろうか。
「・・やはり、無理か」
カルレインは、わざとらしく手で顔を覆うと、深いため息をついた。
「あ、あの・・、頬でもかまいませんか?」
自分のせいで、こんなにも悲しませている。
リリティスは、耳の後ろまで赤く染まった顔で、小さく尋ねると、
カルレインの頬に、ゆっくりと唇を寄せた。
一瞬が、永遠のように感じる。
リリティスの唇が、カルレインの頬に触れる直前、
お目覚めですか、リリティス様、
という声をかけながら、ルシルが姿を見せた。