盲目の天使
それからひと月がたち、ノルバス王プロンの葬儀が、盛大に執り行われた。
プロンの死は、表向き病死とされ、真実はごく一部の者のみが、知るだけだ。
リリティスの記憶は、いまだ戻らず、真実は明らかにならなかったが、
リリティスが入れられていた牢の寝台の下から、アルシオンが、購入した髪飾りが見つかり、
その中にも、チトの毒が入っていたことが判明した。
行商人を、城へ呼んでいたのも王妃であることが、明らかになり、
カルレインを襲ったこととあわせても、王を殺したのはソレイユであろうと、推測された。
しかし、当の本人は、牢獄生活で精神的に病んでおり、追求することは不可能だ。
王がアルシオンを後継に指名していたため、
ロキ大臣をはじめ、主だった重臣と二人の王子で協議した結果、
王の死因は伏せられ、ソレイユは、城の奥深くで、幽閉されることになった。
死んでしまった国王の、毒殺事件については、詮議しても意味がないとして、
事件はうやむやなまま、闇に葬られることになった。
アルシオンの戴冠にあわせて、前倒しての恩赦があり、リリティスも正式に釈放された形となった。