盲目の天使

カルレインが、リリティスの部屋へ行く途中、アルシオンと行きあった。


「兄上。ちょっとお話があるのですが、よろしいですか?」


アルシオンは、自分の部屋へカルレインを連れて行くと、人ばらいをして、椅子を勧める。


「話とは?」


口を開いてから、暖かみのある部屋だな、とカルレインは、周りを見渡して思った。

殺風景な自分の部屋と違い、色彩の明るい布が、多用してある。

窓辺に飾られた、一輪の花は、もちろん侍女が飾ったのであろうが、

そういうことをさせない、自分とは、ずいぶん違う。


そう思ったとたん、気づいた。



・・そうか、アルシオンの部屋に入るのは、初めてだな。



王妃のこともあり、アルシオンは、自分を嫌っていると思っていたが、

ひょっとすると、拒絶していたのは、自分の方なのかもしれない。


分かり合えそうだと思った時が、別れの直前というのは、皮肉というしかないが、

運命とは、そういうものなのだろう。


「私は、ノルバスの国王として、来月正式に即位いたします」


アルシオンの声で、カルレインは、視線を戻した。

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