盲目の天使
「ルシルの家も、ひょっとして?」
自分の侍女になって支度金をもらえたと喜んだルシル。
「はい。5年前から小作人です。
一度小作人になったら、もう二度と、自分の土地は持てませんから。
けれど、カルレイン様は・・」
言いにくそうに、ルシルの声がかすれてくる。
「農地をもう一度公平に分けなおしてくれるという噂です」
馬車の窓から、みずみずしい草や木の香りが流れ、鼻腔をくすぐる。
暖かな光がさしているのが、目の見えないリリティスにも、はっきりと感じられた。
しかし、
さっきまでの明るい気持ちは、今はもう、跡形もなく、どこかへ消えてしまった。
そんなものは、最初からどこにもなかったかのように。