盲目の天使

実の母が死んだときも、

初めて戦で人をあやめたときも、

実の父親が死んだときも・・・。


カルレインは、決して涙を流すことはなかった。


それは、幼い頃から、常に王子として人目にさらされてきたカルレインが、

自分自身を守るために、自然に身につけた防衛策であったかもしれない。


だが、今、


何よりも喜ぶべき我が子の誕生に、

カルレインは、あふれる涙を止める事ができなかった。


「ううっ・・」


周りにいる大勢の侍女の目を気にすることもなく、

カルレインは、リリティスの寝台に顔をうずめて、涙が枯れるまで泣き続けた。


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