盲目の天使
“ルシル様、どういたしましょう”
侍女の一人が、後ろから入ってきた侍女頭に、指示を仰ぐように視線を向ける。
先ほどカルレインを部屋に入れないよう、奮闘していた侍女頭のルシルは、
自分の瞳に浮かんだしずくをそっと拭うと、他の侍女たちを連れて、静かに部屋から出て行った。
・・・本当に、おめでとうございます。
ルシルは、苦難を乗り越えてようやく幸せを掴んだ二人に、
このまま幸せが続くようにと祈りながら、扉を閉める。
侍女のいなくなった部屋で、カルレインは、自分の頭を何度も往復している掌を感じ、
ようやく頭を上げて、その暖かい手の持ち主を見上げた。
「リリティス。
俺の子を産んでくれて、ありがとう」