盲目の天使
馬車を降りて、数刻。
兵士に極度の緊張を強いた、この険しい道もあと少し、と皆が息をつきかけた時・・。
リリティスは、風を引き裂くような、ビュンという激しい音を聞いた。
突然、どこからともなく、数本の矢が先頭の兵士たちめがけて、飛んでくる。
ビュッ!
ビュッ!
馬の足元に矢が射られて、驚いた馬が、前足を高く蹴り上げ、暴れ始めた。
一列になって、前進しているため、逃げ場がなく、
先頭の数名が、馬もろとも、悲鳴を上げながら、崖の下へと落ちていった。
その大きな物音に驚いて、連鎖的に他の馬も、落ち着きを失う。
どこから狙っている!
カルレインは、馬を御しながら、冷静に射手の姿を探す。
あそこか!
カルレインは、目ざとく射手の姿を捉えると、兵の持っていた弓矢を奪い取り、
自分の前を歩いていた兵士たちを無理やり追い抜いて、全力で駆け出した。