盲目の天使
「リリティス、しっかりつかまっていろ!」
兵士の絶叫と、カルレインの様子から、緊迫した事態を察知して、
リリティスは、黙って、カルレインの体にしがみついた。
少しでも口を開けば、舌を噛んでしまいそうだ。
細い道を疾駆すると、ほんのわずか、曲がりくねった広い場所に出た。
カルレインは、リリティスを馬から下ろし、岩の間に隠すと、
自分も身を潜め、弓に矢を番えた。
相手とは、かなりの距離がある。むこうは、風上。こちらの方が、分が悪い。
そのまま、風がやむのを待つ。
何本かの弓が、カルレインめがけて飛んできたが、岩に当たって、はじかれた。
前方から、強く吹きつけていた風が、ほんのわずか、凪いだ。
次の瞬間、優雅に空を舞っていたジルが、射手のひとりめがけて急降下した。
「ぎゃ~!!」
ジルに襲われた敵の射手たちが、突然のことにひるんで、騒然となる。
今だ!!
カルレインが、狙いを定め、射手めがけて思い切り弓を引くと、
放たれた矢は、空中に弧を描き、そのまま相手の心臓にぴたりと命中した。
「カルレイン様!!」
追って駆けつけたマーズレンや、他の兵士たちも矢を番え、次々に引き始める。
やがて、襲ってきたうちの数人がぐったりと倒れると、残りの射手の姿は、逃げ散って、見えなくなった。