盲目の天使
それは、生きるという行為に対する、哲学的な考えを思い巡らせることでもあったが、
同時に、現実的な側面からは、“誰が”“何のために”自分たちを襲ったかということを考えることでもあった。
山賊が、ノルバス国の正規軍、それもカルレイン様のいる隊列を襲うかしら・・・。
ノルバスの旗を掲げた隊列は、どこからどう見ても、ノルバスの正規軍だ。
行軍の方角を考えれば、カナンを攻めたカルレインの軍だと分かりそうなものだった。
“自分たち”を狙った?
すでに、敗北している国の王女をわざわざ狙うものなど、いるだろうか?
もしかして、狙われたのは・・・。
「どうした?浮かない顔だな」
考え事をしていて、カルレインの気配に気づかなかったリリティスは、
今まさに、頭に思い浮かんだ人物に、急に話しかけられて、どきりとした。
「あの、明日は、いよいよノルバス国のお城に着くのですよね?」
「そうだな。野宿も今夜でお終いだ。明日になれば、暖かいベッドを用意してやれる」
温暖な気候のカナンで育ったリリティスが、ノルバスの寒気に触れ、
しかも、野宿をさせて風邪をひかないか、カルレインは、気がかりだった。