盲目の天使

それは、生きるという行為に対する、哲学的な考えを思い巡らせることでもあったが、

同時に、現実的な側面からは、“誰が”“何のために”自分たちを襲ったかということを考えることでもあった。



山賊が、ノルバス国の正規軍、それもカルレイン様のいる隊列を襲うかしら・・・。



ノルバスの旗を掲げた隊列は、どこからどう見ても、ノルバスの正規軍だ。

行軍の方角を考えれば、カナンを攻めたカルレインの軍だと分かりそうなものだった。


“自分たち”を狙った?

すでに、敗北している国の王女をわざわざ狙うものなど、いるだろうか?



もしかして、狙われたのは・・・。



「どうした?浮かない顔だな」


考え事をしていて、カルレインの気配に気づかなかったリリティスは、

今まさに、頭に思い浮かんだ人物に、急に話しかけられて、どきりとした。


「あの、明日は、いよいよノルバス国のお城に着くのですよね?」


「そうだな。野宿も今夜でお終いだ。明日になれば、暖かいベッドを用意してやれる」


温暖な気候のカナンで育ったリリティスが、ノルバスの寒気に触れ、

しかも、野宿をさせて風邪をひかないか、カルレインは、気がかりだった。








< 65 / 486 >

この作品をシェア

pagetop