盲目の天使
「寒いのは、平気ですが・・・」
リリティスがうつむく。
「どこか痛むところでもおありかな?リリティス姫?」
からかうような口調で、カルレインが意地悪く微笑む。
「もうっ!ご存知ではありませんか!」
頬を膨らませて、ぷいと横を向くリリティスが可愛くて、
カルレインは、思わずぷっと吹き出した。
「もう知りません!」
「悪かった。それで、尻の具合はどうなんだ?」
2日間も馬に揺られて、慣れないリリティスとルシルの二人は、
お尻の皮がむけてしまった。
馬車を調達して2週間。なんとか傷が癒えかけたところだ。
「もう・・大丈夫です・・」
カルレインに背を向けたまま、小さな声で答えた。
襲撃を警戒するなら、早々に馬で駆け抜けた方が良いのだろうが、
女二人を連れていることもあり、カルレインの隊は、通常の倍近い日数をかけてノルバス城へとたどり着いた--。