盲目の天使
盛大なため息をつき、カルレインは今度こそ降参して、寝台から降りた。
横になったままのリリティスの額に、音をたてて軽く口付ける。
「カルレイン様ぁ?」
さきほどまでの穏やかな声が一変し、とがめる様な、低い声を出すオルメ。
「リリティスがよく眠れるように、まじないをかけただけだ」
開き直ったようにオルメに言い訳してから、リリティスの耳元で、わざと艶っぽく囁いた。
「お休み、リリティス。
今日の続きは、今度またゆっくりと教えてやる。
今夜はお前の夢を見よう。お前も私の夢を見ろよ」
「は、はい・・・。
お休みなさいませ。カルレイン様」
心臓がはちきれんばかりに、早鐘を鳴らす。
やっとそれから開放されるのだと、ほっと息をついたが。
「お前は、俺にまじないをかけてくれないのか?」
リリティスを困らせたい、カルレインの思惑を知らない彼女は、
言葉の意味を咀嚼して、まさにカルレインが望むような顔をしてしまう。
「カルレイン様!」
オルメの声に背中を押され、カルレインの足音が、遠ざかっていくのを聞いて、
リリティスは、少し寂しく思った--。