盲目の天使
「お気持ちはわかりました。まずは、カルレイン様にご相談いたしましょう。
身分の高い方がお一人で着替えられるのは、あまりないことです。
カルレイン様のお許しをいただくまで、とりあえず今は、お手伝いさせていただきます」
オルメの道筋だった言葉に、リリティスは素直に頷いた。
着替え終わると、リリティスの前に、手際よく次々と食事が並べられる。
「あの・・、カルレイン様は、もう食事を召し上がったのですか?」
自分は捕虜の扱いを受けているのだから、一人で食事をさせられるのが当然だろうが。
・・・一緒に食べるのは無理よね。
カナンにいたときは、一人で食べることに慣れていた。
誰も、自分に注意をはらうこともない。
そのことに、何も感じなかったはずなのに、今はそれを寂しく思う。
旅の間に、皆で囲む食事が、あまりに楽しかったから。
大勢で一緒に何かをする楽しみを、思い出してしまったから。
しかし、オルメからは、予想外の答えが返ってきた。
「カルレイン様は、すでに食事を終えて、領地の見回りに行かれています。
今は、朝ではなく、昼に近い時間なのですよ」