Bitter
『ごめん、頭痛いから保健室行って来る』



アコ達にそう申し出たのは昼休みになった瞬間だった。



さすがに今日は、彼女達に付き合う気力を4時間弱で使い果たしてしまった。


カナや亮太の心配そうな視線に気づかないフリをしながら教室を出る。






深い息をついて階段を下りだすと、
ちょうどのぼってきたあの教師とばったり会ってしまった。



当然目が合う。



その瞬間、まるで世界が高瀬の瞳とそれ以外のものに二分化されたように、それしか見ることができなくなった。



高瀬も私も表情を変えない。




先に口を開いたのは高瀬だった。




『・・昨日—・・』




その時、タイミングよく他の男子達がちょっかいを出し合いながら後ろから下りてきたので、ぱっと顔をそむけ、“生徒”としてごく自然なお辞儀をして通り過ぎた。




階段をくだる靴音のスピードよりも速く、心臓が脈を打っていた。



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