Bitter


彼の目を見ればわかるのだ。


どんなに見つめ合っても、私自身と高瀬の距離は変わらなかった。

私と彼の間に薄い、しかし確実なフィルターに誰かが横たわっていた。



高瀬は、文子さんを笑わせようと、私の涙をぬぐった。

文子さんと夕日が見たくて、私を隣に座らせた。




でも、だからといって、私を抱くほど彼はバカじゃない。


頭ではちゃんとわかってるのだ。


私はこの高校の、ただの生徒。




だから踏み込まない。寄りかからない。



彼が望むのはささやかな夢。


のめりこまないくらいの、
夢とわかってながら見るくらいの、
わずかなひととき。



ただやっかいなのは、私からの気持ち。

それに彼は気づいてる。


気づかないフリをしていれば、まだ夢をみていられる。

だから私はさっきそれを壊した。



もうそんなフリはできないように、香坂麗なりの告白。


そして私は二度とあの場所に現れない。



高瀬が、私の気持ちを知った上で、香坂麗を求めない限り。

・・つまり、私の想いに応えない限り。





私はそれまで、じっと待つと決めた。


そしてその時こそ、彼を支える。




そうじゃなきゃ、本当の意味で彼を支えることにならないじゃない。

それに私は、私として役に立ちたい。


そうするには、この方法しか思いつかなかったのだ。




『・・・・。』




でも…




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