Bitter
カナが学校に来たのは、それから二日後の午後だった。

一週間ぶりに見る彼女は、大きなマスクをしてきた。

なんだか少し痩せたようで、珍しく髪もおろしているので、ひどく大人っぽい。


じゃぁ本当に風邪だったのか‥?



話し掛けるのに少し緊張した。

『カナ‥‥』

呼び掛けると、彼女は力なく笑う。


藤田先生と同じ笑い方に、なんだか胸が締め付けられる。


『ごめんね、心配かけちゃって‥』

『なに言ってんのよ、あんたはホント必要ないときに謝るね。』

呆れたように笑いかけると、カナは泣きそうな目を泳がせ、何か話そうとする。

しかしタイミングよくチャイムが鳴ってしまったので、その授業の後に聞いてみることにした。


古典の授業なので高瀬が入ってくる。



私は高瀬の話が耳に入らないくらいカナが気になっていた。

彼女は携帯電話をかたく握り締めたまま机にむかっている。

目は一点を見つめて動かない。


10分後、教室にバイブ音が響いた。
カナは画面を見て真っ青になる。

『西崎、しまっとけ。』
という高瀬の注意をよそに、彼女は教科書を片付けだす。

『すみません帰ります!』
カナはそう言って飛び出した。



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