Bitter
カナは、一通り話すと、一呼吸して目を閉じた。


私の頬はびしょぬれになっていた。

いろんな言葉が喉につまっては溶けていく。


『生きててよかっ・・た・・・・』

やっとのことで声を絞り出した。

どうして、この子がこんな目にあわなきゃいけないんだろう。
間違っている。
絶対、間違っている。

ガーゼに滲んだ血が、カナのものだと信じたくなかった。




すると、後ろで静かに扉の開く音がした。

藤田先生と高瀬だ。
そこで話を聞いていたらしい。

2人とも、カナの痛ましい姿を見て絶句した。



藤田先生は、やるせない様子でしゃがみこんで唸った。

そして歯を食いしばってカナを包んだ。


『・・っ…馬鹿で…弱くて・・・ごめん・・・!』




カナは少し驚いた後、あざができた手をふるふると先生の背中に回した。
そして呼吸が次第に荒くなり、子供みたいにしがみついて泣いた。




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