Bitter
『・・・・・・?』
顔にかぶさったものを手に取ると、それは彼のTシャツだった。
高瀬は身体を離した。
『着ろ。』
言い放った。
私はぽかんと口を開けたまま彼の背中を見つめた。
『・・・・・・・・・。』
シャツをわしずかみにしたまま、わなわなと震える。
『・・・なんで・・・・・っ。』
それを彼に投げつける。
『今日・・だけでいい・・、愛してよ・・・・。』
冷たい背中に抱きつく私に、
彼はもう一度それをかぶせた。
そして肩に置いた手に力をこめて言った。
『だってお前・・・抱いたら死ぬだろうが。』
『・・・・・・・。』
『どっちにしろそのつもりだろうが・・。』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ。』
身体の震えがとまらない。
私はTシャツで顔だけ隠れたおかしな格好で、泣きじゃくった。
一つになってよ、抱いてよ
と、ひとしきりわめくと、今度は、
殺してよ、殺してよ、
あんたは鬼だ、ひどい男だ、
こんな女嫌いでしょう、殺してよ、
と彼をひっかいた。
Tシャツを脱ぎ捨て涙をふくと、
子犬のような目をした彼が目に飛び込んできた。
『・・っ・・うああぁあんっ。』
その顔を思い切りひっぱたき、
鬼は私だ、と、抱きついた。
出しっぱなしのお湯が、さっきの雨のような音で
静かに泣いていた。